今後の歯科界の未来を考察する

 

医療法人社団博愛会ドクターブログ

札幌市豊平区の歯医者、医療法人社団博愛会のドクターによるブログです

今後の歯科界の未来を考察する

医療法人社団博愛会 理事長 今井崇博

先日、長野県松本歯科大学で開催された第41回全国歯科大学同窓会・校友会学術担当者連絡会(学術連絡会)に北海道大学歯学部同窓会から派遣されて参加してきました。今回のテーマは「歯科界の未来について」ということで、これからの10年~30年後の状況を推察し、それに対して我々歯科医師が診療・経営にどのように対応して日本国の歯科医療に貢献していくか、という事などを議論して参りました。

その中で講演していただいた、WHITE CROSS株式会社代表取締役(東北大学歯学部卒業 松本歯科大学非常勤講師)講師:赤司 征大(あかし まさひろ)先生によると今後の歯科の未来は以下のように推察されるようです。

日本は多死社会に突入しており、国力維持のために「面としての労働力の維持と生産性の向上のために」国家戦略を描いています。その国家戦略に寄与する社会保障制度が整備されていく中で、健康寿命の増進・医療費抑制に寄与する政策が優先的に推進されています。すでに科学的・政策的位置付けにおいては「口腔と全身のつながり」が認知されており、今後「口腔の健康を大切にしなければ全身健康に悪影響が出る」ことが社会常識化していきます。

その時代において、日本社会から求められる歯科医療のゴールは「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」となり、歯科医療の期待が高まっています。

歯科医療の技術の価値が下がることはありません、2040年に向けて、歯科治療へのニーズは堅調に推移します。国民皆歯科検診・訪問歯科診療・多職種連携・高齢者・全身管理・予防に関連する項目は加算や新設が続く一方、従来の補綴や保存の基本点数は横ばいないし、漸減していくと推察されます。それに伴い、歯科大学の教育の幅も広がっていきます。歯科医師の社会的地位は今後も高まっていくと思われます、しかし、少子化の影響を受けて、歯科衛生士や歯科助手の採用は今後ますます困難になっていきます。

歯科医院件数は急激に減少していき、歯科医師が不足する時代に突入します。そして、時代の変化に合わせて積極的に発展していく医院と、従来型の医院に分化していきます、また、以下・多職種との連携領域において専門的な機能を有する新しいタイプの医院が確立されていきます。M&Aや分院展開で巨大化していく歯科医療法人が増えています。同時に、歯科医院経営への異業種・投資ファンドの参入が進み、マーケティング・人材採用力において資本力による差が出る時代に入ります。但し、適切に歯科医療を提供している限り、すべての歯科医院が生き残ります。国に頼りきれない時代において、人材を維持できる経営基盤を作るために、社保と自費のバランスを考慮する必要があり、臨床・経営の努力が今まで以上に必要になります。

歯科医師の仕事がAI・ロボットに取って変わられることはあり得ず、歯科医師はより経済的に恵まれた仕事になります。そして、プロフェッショナルとしての思考・判断が求められる領域においてAIをパッチワーク的に活かしていくこととなります。

歯科技工に関しては、歯科技工士不足が加速する中で、小規模歯科技工所の廃業・統合が進み、デジタル歯科技工士指示書・IOS・クラウド連携を軸に、日本全国から受注する中規模以上のラボが増加します。同時に、一定の規模を有する歯科医療法人は、院内技工を発達させていきます。

今回の学術連絡会は日本の歯科の未来について改めて考えさせられる良い機会となりました。私は歯科医師になって約25年になります、振り返ると大きく変化したことは沢山ありますが、昔から変わっていない原理原則のような事柄もあると思います。これからも新しい様々な材料や機械、技術や情報などが出てくるでしょうし、日本国内の状況や人々の価値観なども変わっていくことでしょう。そのような変化の激しい中で、適正な歯科医療、歯科医院経営をしていくために、我々歯科医師が正しい選択と行動を行う責任が大きくなっていくように感じられました。

翌日の早朝は時間があったので国宝松本城を見学し午後の便で札幌へ向かいました。帰りの飛行機の中で、改めて今回の学術連絡会で配布された資料を見直し、歯科の未来、同窓会学術事業の未来を思考することとなりました。考えなければならないこと、実行しなくてはならないことはこれからも様々なことがあり、益々内容が高度になりつつあります。私はこれからも、地域の患者さんのために、従業員のために、より大きな目的と責任をもって頑張っていこうと思いました。