札幌市豊平区の歯医者、アイビー歯科クリニックと平岸駅前こまち歯科のドクターによるブログです

味覚障害について

皆様こんにちは、医療法人社団博愛会、理事長の今井崇博です。

新型コロナウイルス感染症の患者さんが,嗅覚障害・味覚障害を訴えることが注目されています。「ウイルス感染により、味覚の神経細胞周囲の炎症によるもの」との説がありますが、コロナウイルスとの味覚障害の関係についてはまだわからないことが多いです。そこで今回は味覚障害の基本的なお話をしたいと思います。

 

超高齢社会のわが国において近年、味覚障害患者が増加しています。患者の訴えの多くは、味を薄く感じたり、全く分からなくなる「味覚減退・味覚消失」と、何も食べていないのにいつも苦いなどの「自発性の異常味覚」に分けられます。味覚障害の原因は従来、亜鉛欠乏の関与が一般に広く知られており、亜鉛製剤の補充療法が行われ、それなりの成果があります。味覚をつかさどる味蕾(神経細胞)は亜鉛を豊富に含んでいますが、細胞周期は約10日と短いため、亜鉛が不足すると味蕾の細胞をうまくつくれません。その結果、味覚障害を起こすとされています。しかし血液中の亜鉛値は、体内の亜鉛量の0.1%未満とされ、体内の亜鉛の過不足を正しく反映していません。そこで血清亜鉛値が正常範囲であっても、潜在性の亜鉛不足状態が起きている可能性があり、耳鼻科、内科、口腔外科などで亜鉛製剤の投与が推奨されることがあります。

しかし、実は口腔カンジダ症、口腔乾燥、舌炎といった口腔粘膜疾患が原因のものや特発性(原因がわからない)、心因性の味覚障害もあります。口腔粘膜疾患による味覚障害は適切な歯科的対応で改善が可能です。また、特発性や心因性の味覚障害に対しては、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬であるロフラゼプ酸エチルが有効であるとする報告もあります。

近年、高齢者における味覚障害は栄養障害との関連で論じられるようになり、食の専門家である歯科医師・歯科衛生士には、味覚障害への適切な診断と対応が求められている状況です。味覚障害に不安や疑問がある方は是非ご相談ください。